ZUIKO AUTO-T 100mm F2

OMファンが憧れたOMズイコーを代表する「伝説の名珠」

OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 100mm F2 ズイコー 中望遠 100mm F2​

 ZUIKO AUTO-T 100mm F2
  • 画 質  ★★★★★
  • 携帯性  ★★★
  • 希少性  ★★★★★
  • 人気度  ★★★★☆
  • 総合評価 ★★★★☆
ZUIKO AUTO-T 100mm F2

◆愛称 「レジェンド」
zuiko 100mm/f2といえば、OMズイコーを代表する銘玉としてOMファンが憧れた「歴史的名器」だ。zuiko 90mm/f2と人気を二分しているといっていい。なぜ同じ中望遠域で2本もの銘玉が存在するのか?

中望遠域の一般撮影向けとしてのプロ用としてOLYMPUSの技術を余すところなく注いだのがzuiko 100mm/f2だ。当然高い評価を得た。その後登場したのがポートレート用に特化したzuiko 85mm/f2、最後に登場したのがマクロ用に特化したzuiko 90mm/f2だった。

ところがこのルーキーzuiko 90mm/f2はマクロ域のみならず万能として高い評価を得た。よってzuiko 100mm/f2は「かつての銘玉」とよばれるある意味不遇な存在でもある。わたしは敬意を表して「レジェンド」と呼ぶことにしているのだ。

◆良いところ
このzuiko 100mm/f2は、前群に特殊低分散(ED)ガラスと異常分散レンズを採用したアポクロマート構成で、諸収差が極めて低く抑えてあるのが特長だ。

全体繰り出しと後2群フローティングのピント調節によって、0.7mの最短撮影距離を実現している。中望遠にしてはとても短くて便利だ。像倍率1/6まで寄れるのでマクロレンズ的にも使える。もちろん近距離収差補正機構(フローティング システム)も付いているので近接撮影でも性能劣化しずらい作りだ。

当時のOLYMPUSの技術を余すところなく費やした贅沢な作り最高の中望遠だ。極限の描写性能を追求したレンズといえる。

絞り開放から周辺まで極めて優秀な破錠のない写りを見せてくれる。シャープで階調描写(質感描写)も素晴らしい。何より色が良い。光量の少ない場面であっても色乗よく、色の抜けも抜群だ。さすが低分散ガラス!

◆悪いところ
zuiko 100mm/f2に組み込まれている内臓フードは、繰り出し部分が少ししかなくお飾り程度のものだ。レンズは結構大きく太い。なのにアンバランスなほど小さなフード。これはあまりあてにしない方がいい。やはりCONTAXメタルフードNo.5を使用しよう。かっこいいし。

重さはちょうどzuiko 80mm/f2の倍で、ずっしりしている。逆にこのずっしりした感じが高級レンズとしての神々しさをかもちだしているといえるのかも。

◆エピソード
辛口の評価本「写真術」の著者、日沖宗弘氏が著書のなかで絶賛している。「zuiko 100mm/f2は大変優秀と認められるレンズ」だそうだ。

それもそのはずだ。先にも述べたが、なんたって特殊低分散(ED)ガラスと異常分散レンズを採用したアポクロマート構成レンズだ。

普通だったら、このようなレンズの場合、「APO-XXXXX」とか「XXXXX-ED」とか、APO,EDの名称表記で性能を自己主張するものだが、このレンズの場合、そういった名称ではない。

オリンパスは実に謙虚で控えめな名称をつけるものだ。本来なら、
「APO-ZUIKO AUTO-T 100mm F2 ED L
とでも名乗ってもおかしくなかったのではないか。(笑)ごちゃまでだけど。

<諸元>

ZUIKO AUTO-T 100mm F2

コーティング MC
画角  24°
レンズ構成  6群7枚
絞り・形式/範囲  自動/2-22
最短撮影距離  0.7m
最近接撮影範囲  18x12cm
ピント調節方式 直進ヘリコイド
全長/最大径  72mm/70mm
質量  520g
フード  組込み式
フィルター  φ55mmねじ込み
発売時の価格  ¥99,000

 

<所有レンズのデータ>

所有No 名称 コード リア記号 製造年月 状態 用途
Z0 ZUIKO AUTO-T 100mm F2  良好 保存&常用

 

<作例>

ZUIKO AUTO-MACRO 90mm F2

神レンズ中の神レンズ・ズイコーを代表する万能神レンズ

OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-MACRO 90mm F2 ズイコー マクロ 90mm F2

  • 画 質  ★★★★★★
  • 携帯性  ★★★
  • 希少性  ★★★★★
  • 人気度  ★★★★★
  • 総合評価 ★★★★★
ZUIKO AUTO-MACRO 90mm F2

◆愛称 「かみさま」
zuiko 90mm/f2といえば、zuiko 50mm/f2と共にOM ズイコーを代表する高性能で万能のマクロレンズだ。まさにズイコーの傑作レンズといっていい。銘玉中の銘玉。神レンズ中の神レンズだ。もはや「神様」としか呼べないよね。

◆良いところ
このzuiko 90mm/f2は各種アタッチメントなしに、単体で1/2倍までのマクロ撮影が可能となる。独自の遠近距離収差補正機構で、無限遠まで最高の描写力で素晴らしい。

開放値がF2という最高に明るい中望遠マクロレンズなのだが(中望遠マクロレンズで唯一のF2らしい)、絞り開放から開放から実にシャープな写りで、クリアで彩度の高い描写とボケの美しさは特筆なものだ。後ろボケも大変素直で、被写体を際立たせるのに非常に効果的。
もちろん通常の撮影にも十分な描写性能のある「万能中望遠レンズ」だ。

特に感心するのは強い光源を置いても目立つフレアやにじみは発生しないことだ。それに暗部でもしっかり解像してくれる。安心してどんな条件でも持って出すことができる。

~赤城耕一氏「使うオリンパスOM」より~
「OMユーザーは無理をしても必ず所有しなければならない1本である。‥このレンズはただやみくもに明るいだけではなく、性能的にも同クラスのレンズのなかでは最高峰の位置にあるといっていい。とにかく満点をつけることができるズイコーの傑作レンズなのだ。」

◆悪いところ
zuiko 90mm/f2は設計が新しいということもあってか、他のOMズイコーと違い、絞りリングの位置がレンズの根元の方にあり、他のOMズイコーしか使っていない人は戸惑うだろう。まあすぐに慣れるレベルだが。あとレンズの根元が太いのでレンズ着脱ボタンがちょっと押しにくい。これだけのレンズ性能なら銅鏡は当然太くなるのでやむを得ないか。

また、特にマクロ域での手持ち撮影では、手ぶれとピント合わせには細心の注意が必要だ。

あとズッシリ重たいのでzuiko 85mm/f2ほど軽快にはできないかな。重さはzuiko 85mm/f2の2倍余ある。逆にこのずっしりした感じが神レンズの神々しさをかもちだしているといえるかも。

◆エピソード
zuiko 90mm/f2は1986年のカタログから登場した後発組のレンズだけに、設計思想もデザインもまるで違い新しい。新入りの部類だが、OMズイコーの代表になった。まるでドリフターズの新入り志村けんみたいなものか。(わかるかなぁ~)

OLYMPUS推奨のフードはzuiko 135mm/f4.5マクロと共用のゴム製となっている。これはどうもなーということで、CONTAXメタルフードNo.5を使用している。色がマッチしてカッコイイ。

どうでもいいことだけど、これまでのズイコーの中望遠・望遠といえば「サツマイモ」の形が連想されるのだが、初めてこのレンズを見たときは、なにか「桶」のような、あるいは古い壺のような形を連想させられるんだよね。

<諸元>

ZUIKO AUTO-MACRO 90mm F2

コーティング MC
画角  27°
レンズ構成  9群9枚
絞り・形式/範囲  自動/2-22
最短撮影距離  0.4m
最近接撮影範囲  7.2×4.8cm
ピント調節方式 直進ヘリコイド
全長/最大径  71mm/72mm
質量  550g
フード  φ57mmかぶせ
フィルター  φ55mmねじ込み
発売時の価格  ¥118,000

 

<所有レンズのデータ>

所有No 名称 コード リア記号 製造年月 状態 用途
Z0 ZUIKO AUTO-MACRO 90mm F2  良好 保存&常用

 

<作例>

ZUIKO AUTO-T 85mm F2

小型・軽量で大口径、ポートレート用だが用途の広いレンズ

OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 85mm F2 ズイコー ポートレート 85mm F2

 ZUIKO AUTO-T 85mm F2
  • 画 質  ★★★★☆
  • 携帯性  ★★★★☆
  • 希少性  ★★★
  • 人気度  ★★★★
  • 総合評価 ★★★★
ZUIKO AUTO-T 85mm F2

◆愛称 「たつじん」
zuiko 85mm/f2はポートレート用として知られている。そのポートレートレンズにつけた名前が「たつじん」。それこそ達人的に美人をとれるってことだ。(といいつつ、美人の撮影が少ないという、、、)

◆良いところ
このzuiko 85mm/f2はとてもOMズイコーらしい、コンパクトな中望遠レンズで、小型軽量なのに大口径単焦点レンズの良さを手軽に堪能できるレンズといえるだろう。

絞り開放もF2と明るく、とても使いやすい。発色もクリアで非常に使いやすい。なによりもボケがきれいで、絞り開放付近は低解像度の甘い(やわらかい)描写で、OLYMPUSが本気で開発したポートレートレンズなんだろうな。

だがポートレートのみならず、いろいろ使い勝手はいい。F4まで絞ればほぼシャープな描写となり、風景撮影でも問題はない。ディテールや暗部の微妙なコントラストをきちんと表現しながら、柔らかく暖かみのある画が撮れる。さらに最短撮影距離が35cmと近いのがうれしい。ポートレートのみならず、幅広く活用できそうだ。

◆悪いところ
被写界深度はかなり浅い。ちょっと被写体が離れると甘い写真になることがあるかもしれないが、それはこのレンズの性能というよりはピントをしっかり追い込めないことにあるのかもしれない。

絞り開放では少々眠い画となるが、少し絞ると結構しっかりした絵になる。ただ、zuiko 90mm/f2やzuiko 100mm/f2と比べると、「コントラスト」は低めでシャープさ解像度もわずかに劣る感じは否めないが、圧倒的なコンパクトさを考慮するとzuiko 85mm/f2は十分な存在価値があると言える。

◆エピソード
このzuiko 85mm/f2は100mm/f2.8と見た目がそっくりだ。で、この手の中にすっぽり隠れそうな大きさが大好きだ。ただ、このレンズがコンパクトなせいで、ずっしり重たく大きいzuiko 90mm/f2やzuiko 100mm/f2がよけいかなりの高性能の印象が強まったのじゃないだろうか?(zuiko 90mm/f2やzuiko 100mm/f2はもともと超高性能だが、zuiko 85mm/f2も普通に高性能なのだ!)やはり大きく重たいレンズはいいレンズというイメージが強すぎだ。

ところで専用のラバーフードは変形しやすい。ペンタックスのMH-RB52やニコンHS-14などのメタルフードを付けるのがおすすめだ。でもやはりOLYMPUS血統の付属品を使いたくなるね。

<諸元>

ZUIKO AUTO-T 85mm F2

コーティング MC
画角  29°
レンズ構成  4群6枚
(4群5枚)
絞り・形式/範囲  自動/2-16
最短撮影距離  0.85m
最近接撮影範囲  25x17cm
ピント調節方式 直進ヘリコイド
全長/最大径  46mm/60mm
質量  260g
フード  φ49mmねじ込み
フィルター  φ49mmねじ込み
発売時の価格  ¥64,000

 

<所有レンズのデータ>

所有No 名称 コード リア記号 製造年月 状態 用途
Z0 ZUIKO AUTO-T 85mm F2  良好 保存&常用

 

<作例>

ZUIKO AUTO-S 55mm F1.2

ソフトで柔らかくレトロな情景とポートレートに最適

OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 55mm F1.2 ズイコー 標準 55mm F1.2

 
  • 画 質  ★★☆
  • 携帯性  ★★
  • 希少性  ★★★★
  • 人気度  ★★★
  • 総合評価 ★★★
ZUIKO AUTO-S 55mm F1.2

◆愛称 「あとむくん」
zuiko 50mm/f1.2の前身のレンズだ。

かつて標準レンズといえば50mm F1.4が一般的だったのだが、当時の大口径ブームにより、各社は競ってF1.2の標準を開発しはじめた。しかし、当初50mmの焦点距離でF1.2を実現するのは技術的に難しかったようで、初期のF1.2レンズは、僅か長焦点の 55~58mmクラスになっていた。

OLYMPUSもその時流に合わせ開発したのがこのzuiko 55mm/f1.2だったようだ。

50mm近くにまでレンズの屈折率を上げ、かつ明るいレンズを作るために酸化トリウムを使ったと言われている。このトリウム、実は放射能が出るらしい。なのでこのようにトリウムを使ったレンズをアトムレンズと言われているのだ。ただ人体にはほとんど影響はないらしい。ガイガーカウンターで計測すればわずかに針が振れる程度なのだそうだ。

そこでzuiko 55mm/f1.2を「あとむくん」と呼ぶようになったのだが、トリウムは旧式の50mm /f1.8や50mm/f1.4でも使われていたこともあるようで、アトムレンズはこのレンズだけではなかったようだ。アトムレンズはたいてい古くなると黄変するので、黄色いレンズはアトムレンズの可能性があると考えてもいいだろう。

基本的にフイルター枠が銀縁のタイプはこれで、後期の黒縁のタイプはアトムレンズではないはずだ。

◆良いところ
正直言って、この初期の 55~58mm級のF1.2レンズは、ただ明るいだけであって描写力は不満が残るものが多い。特にF1.2開放の描写性能はかなり落ちる傾向がある。

一般的にはシャープで固めな描写なOMズイコーにしては、このzuiko 55mm/f1.2は(珍しく)柔らかく綺麗なボケが魅力的な描写だ。

開放は「とろん」としたとても優しい描写だ。ピントが合えばとても線の細い描写となる。F2.8まで絞ればシャープとなり普通にも使える。開放では(よく言えば)ソフトフォーカスみたいになるので、ポートレートとして使うのが最適だ。風景はしっかり絞って使いたい。

40年以上も前のレンズで、オールドレンズというよりはクラシックの域にあるレンズといってもいいかもしれない。街をレトロな描写で撮影したいときにもいいと思う。
たとえるなら角のあるとんがってた人が、年をとって親父になると、まあるく柔らかくなったようなイメージ。でも頑固でこだわりを持ち続けている、そんな描写だ。

◆悪いところ
zuiko 55mm/f1.2は太くずっしり重く、クラシカルな要素たっぷりのOMズイコーだ。一時期、意外にも高値になっていたようだが、いまの基準では評価の低いレンズかもしれない。ただクラシックレンズの描写に近いので、それが情緒的でいいね。という人もいるので、評価は二分されるだろうな。特に開放ではもやもやした感じが賛美別れるところ。やわらいのが好きな人にはいいが、OMズイコーらしいキリッとしてコントラストもしっかりしているのが好きなひとには物足りなくなるだろう。

初期型のフィルター銀枠はフレアやにじみがすごい。またレンズはアトムの影響か、黄変(黄土色に変色)してる(焼けてる)ことが多いが、後期型の黒枠になるとにじみは少く、黄変もしていないことが多いようだ。ちなみにどちらもシングルコートしかない。

何年かすると絞りに油が染みて動きが鈍くなるらしい。定期的なメインテナンスが必要になるのかな。

◆エピソード
銀枠のOMズイコー のなかで一番好きだ。M-1のシルバーにつけるととてもかっこいい。大きなレンズに気持ちも踊ってしまう。できればM-SYSTEMの銘のついたzuiko 55mm/f1.2がほしいんだよな。そもそも存在するのかすらわからない。誰か教えてほしい。⇒みつけました。ありました。買えなかったです。( ノД`)シクシク…

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<諸元>

ZUIKO AUTO-S 55mm F1.2

コーティング MC
画角 43°
レンズ構成  6群7枚
絞り・形式/範囲  自動/1.2-16
最短撮影距離  0.45m
最近接撮影範囲  23x15cm
ピント調節方式 直進ヘリコイド
全長/最大径  47mm/65mm
質量  310g
フード  φ57mmかぶせ
フィルター  φ55mmねじ込み
発売時の価格  調査中

 

<所有レンズのデータ>

所有No 名称 コード リア記号 製造年月 状態 用途
Z030  M-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 55mm F1.2(銀枠)  良好 保存&常用
Z031 ZUIKO AUTO-S 55mm F1.2(黒枠)

 

<作例>

ZUIKO AUTO-MACRO 50mm F3.5

イザという時のコンパクト軽量な安定したマクロ性能

OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-MACRO 50mm F3.5 ズイコー マクロ 50mm F3.5

ZUIKO AUTO-MACRO 50mm F3.5
  • 画 質  ★★★★☆
  • 携帯性  ★★★★★
  • 希少性  ★★★☆
  • 人気度  ★★★★★
  • 総合評価 ★★★★☆
ZUIKO AUTO-MACRO 50mm F3.5

◆愛称 「こまくろだま」
zuiko 50mm/f3.5といえば、かの銘玉中の銘玉だといえるzuiko 50mm/f2の”廉価版”としての位置づけだ。にもかかわらず評価はとても高い。F2もF3.5もどちらも優秀レンズの称号として「たま」を愛称につけたくて「おおまくろだま」と「こまくろだま」と名付けた。

◆良いところ
収差がよく補正されていて解像度はとても高い。絞り開放から非常に緻密な描写をするレンズで、非常に安定した描写性能を示す。先ほどzuiko 50mm/f2の”廉価版”としてのF3.5と書いたが、マクロレンズとしてzuiko 50mm/f3.5はいたって普通のことだ。スペックは普通だが、なによりもこのコンパクトさでそれを実現したマクロ性能の方を称えたい。

とにかくコンパクトなマクロレンズなので持ち運びがとても楽。普通撮影でも十分な能力なので、いざというときに備えて一本常備しておきたくなる。

◆悪いところ
普通の標準と同じように考えたらzuiko 50mm/f3.5は”暗い”ということになるが、デジタルでの利用でそんなに気にする人は少なくなっただろう。ただ、ボケはちょっと硬い感じで美しくはない。なので、むしろしっかり絞ってマクロにも使うという人にはとてもいいとおもう。

絞り開放では若干フレアが残り、少し滲んだような描写になる。しかしピントの芯そのものはしっかりしている。一段のF5.6まで絞ると非常にクッキリとする。一番美味しい絞りはF5.6だろうな。

ちなみに、このレンズの絞りリングはF4という設定がない。F3.5の次はF5.6にしかクリックできないのだ。まあしょうがない。

◆エピソード

ある一日がかりの資格試験を受けに行ったその昼休み、近くの公園で花が奇麗に咲いているので、このレンズで撮影してみた。あまりに奇麗にとれるので夢中になりすぎて、午後からの試験をすっぽかしたことがある。それだけ病みつきになれるレンズなのだろう。軽くてコンパクトで性能のほどよいレンズならzuiko 50mm/f3.5がお勧めだ。

<諸元>

ZUIKO AUTO-MACRO 50mm F3.5

コーティング MC
画角  47°
レンズ構成  4群5枚
絞り・形式/範囲  自動/3.5-22
最短撮影距離  0.23m
最近接撮影範囲  7.2×4.8cm
ピント調節方式 直進ヘリコイド
全長/最大径  40mm/60mm
質量  200g
フード  不要(公式には)
フィルター  φ49mmねじ込み
発売時の価格  ¥62,000

 

<所有レンズのデータ>

所有No 名称 コード リア記号 製造年月 状態 用途
Z029  良好 保存&常用

 

<作例>

ZUIKO AUTO-MACRO 50mm F2

通常撮影でもマクロでも秀逸な描写力。至高の標準

OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-MACRO 50mm F2 ズイコー マクロ  50mm F2

  • 画 質  ★★★★★★
  • 携帯性  ★★★★
  • 希少性  ★★★★★
  • 人気度  ★★★★★
  • 総合評価 ★★★★★

◆愛称 「おおまくろだま」
オリンパスの力を示す銘玉中の銘玉だ。この50のマクロにはzuiko 50mm/f2の他に50mm/f3.5という”廉価版”が用意されている。どちらも評価の高いのだが、特にF2の方はF2という明るさをマクロで実現しつつ、ずっしりとした重みと大きなレンズが所有欲を満たしてくれる。どちらも優秀レンズの称号として「たま」を愛称につけたくて「おおまくろだま」と「こまくろだま」と名付けた。

◆良いところ
そもそもマクロレンズとは、近接撮影ゆえに収差の影響が大きくなる。その収差を極限に抑えようとするとどうしても開放F値をおさえておくのが普通で、たいていのマクロはF3.5よくてもF2.8が普通だ。そんな中で当時F2を実現したのがOLYMPUSのすごいところだ。

zuiko 50mm/f2は、明るさとマクロ撮影の両面での描写性能を実現するというたいへんな技術力が必要だったに違いない。

とても開放からシャープでちょっと絞ればかなりキリリとした描写だ。そのうえ硬すぎるということもない。そしてボケがやわらかく美しい。ボケが大きくふんわりしてピンのあった部分はキリリとするそのメリハリの良さは私の大好きなところだ。

◆悪いところ
OM ズイコーらしくないその大きさかな。(当時の他社より製品よりは小さい方と思うが。)鏡胴が太く、重量もずしりとしている。でもこれだけの性能のレンズだ。全く気にはならない。ただどうしてももう少し軽いのがいいということなら「こまくろだま」のzuiko 50mm/f3.5マクロを選択すればいい。性能もそこそこだ。

◆エピソード
このzuiko 50mm/f2はマクロらしい風貌だ。とても所有欲を満たしてくれてとってもお気に入り。これと90F2マクロとのセットで持ち出すことが多い。前面レンズが奥に引っ込んでいるためフードが不要とのことになっているが、フードはつけた方がよさそうだ。フレアにやられたことはないが、いちおう念のためだ。omfanのimaiさんのHPを参考に、コンタックスのメタルフード(No.4)をつけてる。

<諸元>

ZUIKO AUTO-MACRO 50mm F2

コーティング MC
画角  47°
レンズ構成  7群9枚
絞り・形式/範囲  自動/2-16
最短撮影距離  0.24m
最近接撮影範囲  7.2×4.8cm
ピント調節方式 直進ヘリコイド
全長/最大径  55mm/69mm
質量  320g
フード  不要(公式には)
フィルター  φ55mmねじ込み
発売時の価格  ¥100,000

 

<所有レンズのデータ>

所有No 名称 コード リア記号 製造年月 状態 用途
Z028 ZUIKO AUTO-MACRO 50mm F2  良好 保存&常用

 

<作例>

ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8

軽量コンパクトで癖のない優秀な写り。最高の餅撒きレンズ

OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S  50mm F1.8 ズイコー 標準 50mm f1.8

ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8
  • 画 質  ★★★★☆
  • 携帯性  ★★★★★
  • 希少性  ☆
  • 人気度  ★★★
  • 総合評価 ★★★

ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8

純正ガウスタイプ

◆愛称 「おかざり」
このzuiko 50mm/f1.8といえば、かつてボディとセットでしか販売がされておらず、”付録”として扱われることが多かったレンズだ。量産されていたはずなのでコストは相当おさえられていたのだろう。そのうえ、安価にOMボディを購入しようとすれば必ずついてくる。それだけに利用者も多かったはずだ。メーカの「顔」として開発に力が入ったに違いない。実は意外にも相当優秀なレンズなのだ。

ボディの付録で大衆向けレンズということで「おかざり」と名付けたが、この性能は飾りではなさそうで。わたしのお気に入りの一つでもある。

◆良いところ
小型軽量で映りがいい。標準の劣化版という平凡なイメージを払拭してしまう。クセのないしっかりとした写りをするレンズだ。高い解像力と適度なコントラストで発色もよい。ボケはかなり良質で、絞り開放から比較的良好な描写をする。絞るとかなりシャープになるがキレキレすぎにはならない。そのほど良さがいいと思う。

さっきも書いたが、zuiko 50mm/f1.8はOMズイコーの中では最も多く出荷されたレンズではないかと思う。そのためか、OLYMPUSとしても力を入れて作ったに違いない。それぐらい完成度の高いレンズだ。

あと、後期のバージョンは機構がかなり単純な作りになっているので、分解修理が実に簡単だ。レンズ分解清掃を自分でやろうとする方には入門機としていいと思う。

◆悪いところ
中古市場の玉数は相当なもので、数千円出せば確実にそこそこ程度の良い玉が手に入いる。まあ、悪いところしては希少価値のなさか。もしくは安物としての扱いを受けることか。まあそんな中で特に良質な玉を探すのも楽しいんだけどね。

◆エピソード
世にいう「沼」という病気にもいろいろあるが、私がはまった沼はなんと「zuiko 50mm/f1.8沼」という難病だ。

このレンズには何か不思議な魅力がある。しかも安い。なので中古市場でついつい買い求めて気づけば30個以上も集めてしまった。その後いいものだけをより分けていらないのは処分したが、それでもいくつかは持ったままだ。

ちなみにzuiko 50mm/f1.88には以下の種類がある。私は現在これを全て保有している。

・M-SYSTEM F.ZUIKO 50mm/f1.8
※※初代Mシステム用 シングルコート・銀枠(レンズ先端の飾りが銀色)

・OM-SYSTEM F.ZUIKO 50mm/f1.8
※※シングルコート・銀枠(レンズ先端の飾りが銀色)

・OM-SYSTEM F.ZUIKO 50mm/f1.8
※※シングルコート・黒枠(レンズ先端の飾りが黒色)

・OM-SYSTEM ZUIKO MC 50mm/f1.8
※※マルチコート・黒枠(レンズ先端の飾りが黒色)

・OM-SYSTEM ZUIKO 50mm/f1.8
※※MC表記なし(マルチコート)・黒枠(レンズ先端の飾りが黒色)
※※※鏡胴がプラスチックになりレンズ構成も見直されている


<諸元>

ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8

コーティング MC
画角  47°
レンズ構成  5群6枚
(4群6枚)
絞り・形式/範囲 自動/ 1.8-16
最短撮影距離  0.45m
最近接撮影範囲  24x16cm
ピント調節方式 直進ヘリコイド
全長/最大径  31mm [32mm]/59mm [61mm]
質量  170g [165g]
フード  φ51mmかぶせ
フィルター  φ49mmねじ込み
発売時の価格  ¥24,000

 

<所有レンズのデータ>

所有No 名称 コード リア記号 製造年月 状態 用途
Z023 M-SYSTEM F.ZUIKO AUTO-S 50mmF1.8(銀縁)  良好 コレクション
Z024 F.ZUIKO AUTO-S 50mmF1.8(銀縁) 良好 コレクション
Z025 F.ZUIKO AUTO-S 50mmF1.8(黒縁)  良好  コレクション
Z026 ZUIKO MC AUTO-S 50mmF1.8(黒縁)  良好  コレクション
Z027 ZUIKO AUTO-S 50mmF1.8(黒縁)  良好 保存&常用

 

<作例>

ZUIKO AUTO-S 50mm F1.4

柔らかくも硬くともあらゆる撮影シーンに対応する万能標準

OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm F1.4 ズイコー 標準 50mm F1.4

ZUIKO AUTO-S 50mm F1.4
  • 画 質  ★★★★
  • 携帯性  ★★★
  • 希少性  ★★
  • 人気度  ★★★☆
  • 総合評価 ★★★

ZUIKO AUTO-S 50mm F1.4

純正ガウスタイプ

◆愛称 「ひょーじゅん」
OM全盛期、OMひと桁機(OM-2,OM-4・・)の標準レンズとして一緒に販売されていたレンズがzuiko 50mm/f1.4だ。なので愛称は「ひょーじゅん」だ。

ちなみにOMふた桁機(OM10,OM20・・)の標準レンズはzuiko 50mm/f1.8。つまりzuiko 50mm/f1.4はフラッグシップ用としての誇り高き標準なのだ。

◆良いところ
開放は甘く柔らかい描写で絞るほどにコントラストが上がっていき絞ればF5.6位で性能をフルに発揮するという、二つの顔をもつ面白い性質をもった特徴的な標準レンズだ。

絞り開放モード(と呼ぶことにする)では描写が柔らかい。解像しながらも軟らかいものがまとわりつく感じ。絞りモード(と呼ぶことにする)にするとシャープに変わる。F2.8くらいからかっちりしてくるように思われる。シャープネスは高く色再現もしっかりしている。

描写傾向はややコントラストが高めだ。標準的な7枚構成の変形ガウス型を採用している。好みもあるが、OMらしくコンパクトにまとまったレンズといえるだろう。OMボディに装着した時の格好もいい。

~赤城耕一氏「使うオリンパスOM」より~
「設計当時のほとんどの国産メーカーの標準レンズがそうであったように、このレンズも球面収差は補正過剰気味だ。開放時はハレっぽい感じであり、特有の柔らかさを持つ。それでもピントの合った部分では細かなところまで、よく解像している。わずかに絞っただけでも、急激にコントラストが増す。絞りによって性格が変わるタイプのレンズである。F5.6あたりの絞り値では、実に高品位な描写になる。」

◆悪いところ
zuiko 50mm/f1.4といえば標準レンズというぐらいだからカメラと一緒に販売。なので(当時は)最も出荷量が多いレンズなのだ。なので標準レンズといえばカメラ会社の顔だ。

上記でも述べたが、そんな標準レンズの中でも当時の「50mm f1.4」といえばフラッグシップ用。なので各社気合いをいれて開発を競ってきた。もちろんzuiko 50mm/f1.4は素晴らしいレンズだ。

絞り開放時とF5.6位まで絞った時まで全く別のレンズのような特徴を持つ。そんな特徴的な性格を標準レンズにしたのは、たまたまかもしれないが、もしかすると意図があったのかもしれない。

ホワっとしたポートレート撮影にもカリカリな風景撮影にもあらゆる撮影スタイルに対応させたのです!となれば十分な長所となるのだが。残念なことに絞り開放モード(と呼ぶことにする)の描写は人によっては評価がわかれてしまうものだ。

絞り開放モードのホワっとした柔らかい描写が、「コントラストが低い」「色が乗らない」「フレアが出やすく鮮鋭度がぐっと落ちる」という悪評になっているのだ。(絞りモードにすれば解決するのだが。)まあそれこそ好みなんだけどね。

よく比較されるのがzuiko 50mm/f1.8との差だ。zuiko 50mm/f1.8はこれまた出来の良いレンズで、性能が高くコンパクト。実用上は大差ない。1.4はやや大柄で、重さもあるし、価格も高くなる。ただこれもポートレートとしても使えるよと考えればお得なんだけどね。

絞り開放モードでは肌のシミ・ソバカス・シワをシビアに強調しないから、彼女を美人に撮れるレンズという付加価値もあるのだ!

◆エピソード
OM全盛期の当時、カメラを買えば必ず標準レンズ(50mm)とセット、、というのが当たり前の時代だったが実は自分は標準レンズ付きでカメラを買ったことがない・・。

生まれて最初に買ったOM10はzuiko 35-70mm/f3.5-4.5の組み合わせだった。次に買ったOM-4はzuiko 40mm/f2に一目ぼれしてそっちを標準としてしまった。なので自分の人生で最も多感で伸び盛りの若きカメラ熱中時代にF1.4などという明るいレンズの使用体験をしてこなかったのだ。それに悔いがあるのか今では積極的に標準レンズを楽しんでいる。

立派なメタルフード(50mm/f1.8及び35mm/f2.8と共用)が用意されているが、後年、ラバー(ゴム)製のものに変更された。私は当初、「やっぱメタルがカッコイイ」って思ってた。だが使っていくうちに「やっぱりラバーの方がクッションになって扱いやすい」と思うようになった。

年季を重ねると格好より実用的な方がよく思えてくる。オリンパスもそいういうニーズを大切にしてラバー製のフードに切り替えたのかな?

ところでzuiko 50mm/f1.4には次の5つのタイプがある。(M-SYSTEMも分ければ6タイプ)

●TYPE-1 銀縁モノコート(G.ZUIKO AUTO-S)
M-SYSTEMとOM-SYSTEMがある。

●TYPE-2 黒縁モノコート(G.ZUIKO AUTO-S)
TYPE-2とTYPE-3、4の違いはモノとマルチコート。

●TYPE-3 マルチコート、MC表示あり(ZUIKO MC AUTO-S)
シリアルが70万番台以上で100万番台未満。
TYPE-4、5と比較するとマルチコーティングの色が濃い。
クモリ玉が多いので中古購入時は要注意。

●TYPE-4 マルチコート、MC表示あり(ZUIKO MC AUTO-S)
シリアルが100万番台以上で110万番台未満。
TYPE-3と比較するとマルチコーティングの色がうすい。
クモリ玉があるので中古購入時は要注意。

●TYPE-5 マルチコート、MC表示なし(ZUIKO AUTO-S)
シリアルが110万番台以上。
TYPE-5のみリアガードが角になっています。
TYPE-5のみマウント部がツーピース構造となっている。
TYPE-1~4のリアガードは一枚の板。
TYPE-3と比較するとマルチコーティングの色がうすい。

トリウムレンズは日本では1970年代半ばまで製造されていた。
OMファン様(http://www.asahi-net.or.jp/~RN6H-IMI/)より

<諸元>

ZUIKO AUTO-S 50mm F1.4

コーティング MC
画角  47°
レンズ構成  6群7レンズ
絞り・形式/範囲  自動/1.4-16
最短撮影距離  0.45m
最近接撮影範囲  24x16cm
ピント調節方式 直進ヘリコイド
全長/最大径  36mm [40mm]/60mm
質量  230g
フード  φ51mmかぶせ
フィルター  φ49mmねじ込み
発売時の価格  なし(ボディ付属のため)

 

<所有レンズのデータ>

所有No 名称 コード リア記号 製造年月 状態 用途
Z019 M-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-W 50mm F1.4(銀縁)  良好 保存&常用
Z020 G.ZUIKO AUTO-S 50mm F1.4(銀縁) 良好 コレクション
Z021 ZUIKO AUTO-S 50mm F1.4(黒縁) 良好 保存&常用

 

<作例>

ZUIKO AUTO-S 50mm F1.2

随一の大口径。画面周辺での鮮鋭度もすぐれた標準レンズの傑作

OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm F1.2 ズイコー 標準 50mm f1.2

ZUIKO AUTO-S 50mm F1.2
  • 画 質  ★★★★☆
  • 携帯性  ★★★☆
  • 希少性  ★★★★☆
  • 人気度  ★★★★★
  • 総合評価 ★★★★☆

ZUIKO AUTO-S 50mm F1.2

純正ガウスタイプ

◆愛称 「たまたま」
大口径にも関わらずフィルター径が49mmで、レンズ両端に比べピントリング部のふくらみが強調され、他のズイコーとはちょっと違ったデザインだ。まるでボールのような形状なので当初は「ボール君」と名付けていた。

だがそのzuiko 50mm/f1.2の実力は「玉の中の玉」といっていいほど。ボールぽい見かけと「銘玉」といえる実力を兼ねてるところから、ちょっとした遊び心で「たまたま」と名付けた。

◆良いところ
このzuiko 50mm/f1.2は、ズイコー随一の大口径ながら設計に無理がなく、画面周辺での鮮鋭度にもすぐれた標準レンズの傑作だ。この明るさに美しいボケ具合。一度使うとファインダーを覗くのが癖になってしまう。

絞り開放ではかなり甘い描写となりポートレート向きの柔らかい描写と言える。だがf2.8~f4まで絞れば十分な解像度とシャープネスを伴った非常に高い描写力を発揮する。

豊かな階調とクリアで深みある色再現性が素晴らしい。コントラストは全ての絞りでしっかりしている。最近接撮影距離も0.45mで日常マクロも使える。

~赤城耕一氏「使うオリンパスOM」より~
「描写性能はかなり高い。開放時は特別にシャープなわけではないが、コントラストが良好なため、実用絞りとして使うことができる。‥ハロは完全に消えてるわけではないが、ハイライト部分の滲みもわずかで、品の良い個性的な描写となる。」

◆悪いところ
開放ではハイライト部に少しもやっとしたものやら強いハロのようなものやらが出てきて柔らかくなる。それを悪いところとするかどうかは使い方次第だが、f2程度絞ることでハロも解消され全面で良像となる。

よくカミソリのピントと言われるが、そのとおりで被写体深度は紙のように薄い。開放では動く被写体を合焦させるのは相当な技術力が必要になる。フィルムのオールドOMカメラではファインダーが像が柔らかいので特にピントが分かりにくい。

これだけ明るいレンズでピントが合わせにくくなるというのは皮肉なものだ。まあ全ての大口径レンズの特徴でもあるので欠点とも言えないが、他に悪いところが見当たらないので書いてみた。

やはりF1.2の実力は相当のもので、ポートレートで目にピントを合せて、開放だと目以外はすべてピンボケで、まるでマクロ撮影をしているよう。それはそれで撮影が面白くなるのだが、撮りたい絵によっては長所の大口径が欠点になる場合もあるものだ。

~赤城耕一氏「使うオリンパスOM」より~
「明るいファインダーを楽しみ、あえてF2.8以上に絞る。そういう贅沢が、むしろ実用的。」

◆エピソード
zuiko 55mm/f1.2の後継レンズである。大口径化による諸収差を抑えるためには焦点距離が長い方が有利ということから、かつてはF1.2クラスのレンズの標準レンズといえば焦点距離は55mmが一般的だった。

ところがペンタックスが50mm/f1.2を発売。それをきっかけに、各社から50mm/f1.2が発売された。オリンパスもこの流れでzuiko 55mm/f1.2の後継として開発したものだろう。

各社こうした大口径のレンズ設計にはそうとう苦労をしているようで、マウントの大きさやフランジバックの距離などの諸制限で悩まされている。だがオリンパスはすんなりzuiko 50mm/f1.2を出した(ように感じた)。しかもこのスペックで49mm枠のフィルターだ。設計に余裕すら感じられるのだ。

開発者の米谷美久氏は「OMマウントは、超望遠レンズやf1.2クラスのレンズの使用を想定して設計された」と語っている。OMはマウントの設計当初からF1.2の使用を想定して作られているのだ。だから無理のない形状のレンズの設計が可能だったのだろう。

私は中古で購入しのだが随分安かった。相場の半額ぐらいだったのだ。なんでだろうと思ったらピントのゴムリングがひどく痛んでいたのだ。聞くと工業機械用のなにかの装置にくっ付けて使われていたそうで装置と固定させるためのボルトか何かでゴムリングが傷んでしまった個体のようだ。光学系には全く問題がなかった。

カメラ撮影以外の工業機械にこのzuiko 50mm/f1.2が採用され役立っていたと聞くとこのレンズの評価の高さが証明されているようでうれしい気がした。

その後、外観も美しいものを購入しなおしたが、もっぱらゴムリングが傷んでいる方が愛着が沸いてきてて普段使いに役立ってる。


<諸元>

ZUIKO AUTO-S 50mm F1.2

コーティング MC
画角  47°
レンズ構成  6群7枚
絞り・形式/範囲  自動/1.2-16
最短撮影距離  0.45m
最近接撮影範囲  24x16cm
ピント調節方式 直進ヘリコイド
全長/最大径  43mm/65mm
質量  285g
フード  φ51mmかぶせ
フィルター  φ49mmねじ込み
発売時の価格  ¥80,000

 

<所有レンズのデータ>

所有No 名称 コード リア記号 製造年月 状態 用途
Z018 ZUIKO AUTO-S 50mm F1.2  良好 保存&常用

 

<作例>

ZUIKO AUTO-S 40mm F2

希少性高く中古市場高騰・実力派向けのパンケーキ

OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 40mm F2 ズイコー パンケーキ 40mm F2

ZUIKO AUTO-S 40mm F2
  • 画 質  ★★★★
  • 携帯性  ★★★★★
  • 希少性  ★★★★☆
  • 人気度  ★★★★☆
  • 総合評価 ★★★★☆

ZUIKO AUTO-S 40mm F2

新型ガウスタイプ

◆愛称 「ちびすけ」
zuiko 40mm/f2は、OMズイコー唯一のパンケーキだ。「パンケーキ」と名づけてもよかったのだが、それではおもしろくない。

このzuiko 40mm/f2は思い入れのあるレンズで、学生のころから様々なシーンでOM4と共に一緒だった。なので相棒的に呼び捨て感覚なニックネームにしたかった。自然と「チビ!」とか「チビ助!」と呼びたくなるのだ。

◆良いところ
何といってもパンケーキだ。コンパクトなのがもちろん長所だ。最短撮影距離は30cmと焦点距離の割には短めでいい。

F2という明るいうえにコンパクトで、カラーでの発色も良好だ。

OMズイコーの特長は絞り込むとカリカリの硬い描写になるのだがこのレンズはさほど硬くはならず使いやすい。奥行きのある描写を楽しむことができる。(硬いのが好みというOMフアンは多いので意見が分かれそうだけど)

多くのパンケーキでは3群4枚の「テッサータイプ」(という簡単な造り)を採用するのだが、このレンズは6群6枚構成の「ガウスタイプ」という実に贅沢な作りになっている。そのうち4枚は高屈折率低分散ガラスを使用しているという。

あの米谷美久氏が経営者の反対を押し切って開発したというから、あまりに手を込んで作って相当のコストがかかっただろう。その割に定価2万2千円というリーズナブルな価格だった。

ところがこのzuiko 40mm/f2は途中で生産を終了してしまった。当時評価されず人気がなかったとかいわれているが、おそらく収支があわなかったのではないか。一説によると3,000本しか製造されなかったとか。

(※この3,000本という情報は未確認です。このサイトではあくまで他のサイトや古い雑誌などから入手したデータを情報提供しているにすぎません。このサイトはトップにも記載の通り完全に「個人の趣味」のものです。もし間違いなどありましたらぜひコメント欄からお教えください。希少価値をあおり市場価格を操作するような悪質な目的で書いておりません。)

その後ご存じのように大変な人気で、現在の中古市場でも当時価格の3~5倍という異常な高値相場が起きている。

◆悪いところ
前述のとおり大変な人気なのだが、実のところそこまの性能ではないのではないかと思う。シャープネスは十分あるが、開放では少しもやっとする。ひと絞りF2.8以上に絞れば全く問題ないだろう。

人気の元はレンズ性能ではなくやはりそのコンパクトさにあるのだ。デザインは薄型のパンケーキのために随所に工夫がこらされており、絞りリングがレンズ先端のフィルター取りつけ枠と兼用になっている。なので使い込んでいくと絞りリング(フィルター取りつけ枠)のスレキズは半端じゃなくなる。

フィルターを装着すると絞り用のギザギザがフィルターでさえぎられるのでつけたフィルターによっては滑って絞りを回せずらくなる。またフードをつけると、フードそのものを回せば絞りを変えられるという変な現象が起きるのだけど、角型フードや花形フードは上記の理由でつけられない。ほんとは角型フードがカッコイイのだけど・・・。

フードはzuiko 100mm/f2.8と兼用のラバーフードが用意されているが、これを付けるのはいささか難がある。なにせ折角のパンケーキのコンパクトさをフードで台無しにしてしまうのだ。私は程よい大きさのフードをジャンクで見つけて愛用している。

◆エピソード
私がカメラを始めた(30年以上の前の)高校生のころ、一番最初に手にしたレンズがzuiko 35-70mm/f3.5-4.5ズームだった。

標準の単焦点がほしくなり、バイトでためたナケナシのお金を握りしめてカメラ店に行ったのだ。本当はzuiko 50mm/f1.8を買うつもりだったのだがzuiko 40mm/f2をみて一目ぼれして買ってしまった。

珍しく新品で買ったのだけど安くしてもらえたのだ。これまでつかってた35-70mmズームは便利だったが折角のOMボディにも拘わらずレンズがコンパクトじゃないのが不満だった。それに比較して40mmのパンケーキという小ささは私にとってはとても刺激的だったのだ。

そうして手にした自分のお気に入りレンズが今ではプレミアがついているというのは嬉しいことだがちょっと不思議な感覚だ。

当時のオリンパスの謳い文句は、「50mmを選ぶか35mmを選ぶかの間をとった新しい提案」とのこと。米谷さんのキャッチじゃないかな。いまよく考えてみたら35mmの方に近いのだ。でももっぱら私はこの40mmを「標準」としてずっと相棒にしてきた。

時には大口径のずっしり重たいレンズで写真の美しさを堪能したいが、普段はコンパクト装備にこだわりたいものだなどと改めて感じているところだ。

<諸元>

ZUIKO AUTO-S 40mm F2

コーティング MC
画角  56°
レンズ構成  6群6枚
絞り・形式/範囲  自動/2-16
最短撮影距離  0.3m
最近接撮影範囲  18x12cm
ピント調節方式 直進ヘリコイド
全長/最大径  25mm/60mm
質量  140g
フード  φ49mmねじ込み
フィルター  φ49mmねじ込み
発売時の価格  調査中

 

<所有レンズのデータ>

所有No 名称 コード リア記号 製造年月 状態 用途
Z017  ZUIKO AUTO-S 40mm F2  良好 保存&常用

 

<作例>