OMカメラの名前と立ち位置

以前こちら↓のページでもOMの発売日を年表式でご紹介したのだが、今回はその命名について思い出話とともに触れておきたい。

OMカメラ /PENシリーズ/XAシリーズ/他の発売日年表

1982年春ごろの話だ。

私は高校一年生で初めて買った一眼レフがOM10 だった。それがきっかけで今ではクラシックとなったOMシリーズにはなにならぬ愛情を注いできているわけだ。

オリンパスは5大メーカの中でも後発のカメラメーカで、一眼シリーズはOM-1n、ON-2n、OM10の3機種しかなかった。(penシリーズは除く)。だが、OM1、OM2シリーズの大ヒットにより熱烈なファンの獲得に成功していた。

M-1/OM-1(1972年7月発売)はメカニカルシャッターのマニュアル専用機。発表時世界最小最軽量の一眼レフだ。

OM-2(1975年11月発売)は絞り優先の電子制御シャッターを装備したAE機。 世界初のTTLダイレクト測光。専用ストロボを用いたTTLストロボ自動調光も実現した。

OM-1n/OM-2n(1979年3月発売)はそれぞれのマイナーチェンジ版だ。

OM10(1979年6月発売)はOM2からTTL自動調光を省略、モータードライブ非対応など設計を簡素化した普及版AE専用機だ。

OM10の登場でOM一桁シリーズとOM二桁シリーズとの差別化がはっきりした。一桁はプロ・ハイエンド、二桁はエントリークラスを対象にしている。

そして、1982年10月になり、OM20が発売開始された。OM10の上級版とされているが事実上のOM10の後継機だ。マニュアル露出を内蔵し、モータードライブに対応した。

私は、同年5月にカメラ屋の主人に薦められてOM10を購入した。その数か月後にOM20 が発売されてショックだった。一杯食わされたような気がしたのだ。

さてこのOM20、OM2との違いは何だろう。OM1・OM2ともに発売から時間がたっているとはいえプロ・ハイエンド機だ。それに対してOM20 はエントリークラス機、やはり質感がまるで違う。一通りの機能がそろっているとはいえシャッター音も軽くなにかしら頼りない。普及機としてギリギリコスト削減をした結果だろう。

値段もOM-2nが82,000円、OM20が54,500円だ。

さらに、同年11月、OM30が発売開始された。これには少々びっくりした。OM20がでて1か月にしかたっていない。なんですぐにモデルチェンジしたのだろうか?と思った。

時代はオートフォーカスに向かっていた。ただ当時のオートフォーカスレンズはべらぼうに高いわりに遅くて実用的とはいえない。なのでレンズはマニュアルフォーカスだが、ピントが合致してくれていることを光と音で教えてくれる「フォーカスエイド」として発売されたのだ。(ZUIKO AUTO-ZOOM 35-70mm F4 AFを使う場合のみオートフォーカスが可能)

参考

ZUIKO AUTO-ZOOM 35-70mm F4 AF

OM30発売の丁度一年前、1981年11月ペンタックスから世界初のオートフォーカス一眼レフカメラME Fが発売された。こちらはも35-70mmf4の専用AFレンズを使わないといけないのだが、オリンパスもこれに追い付けとオートフォーカスを研究したに違いない。よって1982年11月OM30 は世界2番目のオートフォーカス一眼レフとなった。

OM20とOM30の発売時期が近いのはこうした市場投入機会を狙ってのことだろう。それに、目的が違う

OM-20・・・エントリークラス用AE機(1982年10月発売開始、54,500円)

OM-30・・・エントリークラス用AF機(1982年11月発売開始、62,500円)

ところが、市場はそう見なかった。OM20が古い方、OM30が新しい方となちゃったのだ。よってOM20 はあまり売れなかったのだ。

やはり10・20・30となると古い数字はかすんでしまうのだ。

 

それからOM-1,OM-2が発売から時間がたっていることもあって「そろそろ次のOM一桁がでるんじゃないか」という噂が広がってきた。

1982年1月のカメラ情報誌では多くの企業が次に出るであろう「OM-3」について予想がだされていた。

「オリンパスは立て続けに新製品をだしてきている。OM一桁も新製品がでるらしい、次はやはり、AFに力を入れるんじゃないか?・・いや、プログラムAE機能搭載じゃないか」・憶測が憶測を呼び、新製品「OM-3」に対する期待が高まっていたところ、、ついに1983年10月になって新製品が発表された・・・

え?

なんと出たのは「OM-4」だったのだ!!

OM-1、OM-2とくれば次はOM-3だろ。ふつー。これにも私はびっくりした。こういうのがオリンパスらしいところだ・・・。

しかもご存知の通り、スポット測光という超変化球の独特な機能付きだ。

となると、OM-3は欠番か?

などと考えていたところその1年後、

1984年10月になってOM-3が登場したんだ。しかもOM-2SP(SpotProgram)も同時に。。。

これも仰天ニュースだった。

OM-4の発売時も仰天だったが、4のあとに3が出たということだけでなく、2も一緒にでたのだ。

我々の見方は1の次が2、そして3、4、5だったのだがこのカメラの名称についている数字は決してバージョンを表していないということに初めて気づいたんだ。

OM-1の後だからOM-2じゃなかったのだ。たんに名称だったのだ。

OM-1・・メカニカルシャッターのマニュアル専用機。この意思を継いだのがOM-3だった。

OM-2・・ハイエンドに必要な完成度の高いAE機能を目指す。この意思を引き継いだのがOM-4か。

ではOM-2SpotProgramは??

実はOM-2の意思を引き継いだのはOM-4ではない。OM-2SpotProgramこそがOM-2/OM-2nの後継機なのだ。

OM-4はその上を行くマシンなのだ。そしてその後OM-4Tiとしてマイナーチェンジされこれがロングセラー機となっていく・・。

そして1985年4月、マルチパターン測光で名をはせたニコンFAの対抗機としてOM40が投入されていく。ESパターン測光と称する分割測光により逆光補正の自動化がメインだ。

  • ハイエンドクラス層向け OM-4 ⇒ OM-4Ti
  • ミドルハイエンド層向け OM-2/OM-2n ⇒ OM-2SpotProgram
  • メカニカルニッチ層向け OM-1/OM-1n ⇒ OM-3 ⇒ OM-3Ti
  • エントリークラス層向け
    ・超入門   OM10
    ・中級    OM20
    ・AF欲しい人 OM30
    ・逆光対策  OM40

一連の発売時期とマシンの名称で、メーカーの意思を理解することができた。それにしてもびっくりさせられた。いまだかつてこれを超えるびっくりした商品発表はない。

大切なのは商品名にある数字は、数字を含めても名前だということ。バージョンではないのだ。

今ではmk IIとかマークIII とかいう表現があるが、よく考えられた命名規則だよな。当時からそれを採用していたらよかったのに。