ソフトで柔らかくレトロな情景とポートレートに最適
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 55mm F1.2 ズイコー 標準 55mm F1.2
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◆愛称 「あとむくん」
zuiko 50mm/f1.2の前身のレンズだ。
かつて標準レンズといえば50mm F1.4が一般的だったのだが、当時の大口径ブームにより、各社は競ってF1.2の標準を開発しはじめた。しかし、当初50mmの焦点距離でF1.2を実現するのは技術的に難しかったようで、初期のF1.2レンズは、僅か長焦点の 55~58mmクラスになっていた。
OLYMPUSもその時流に合わせ開発したのがこのzuiko 55mm/f1.2だったようだ。
50mm近くにまでレンズの屈折率を上げ、かつ明るいレンズを作るために酸化トリウムを使ったと言われている。このトリウム、実は放射能が出るらしい。なのでこのようにトリウムを使ったレンズをアトムレンズと言われているのだ。ただ人体にはほとんど影響はないらしい。ガイガーカウンターで計測すればわずかに針が振れる程度なのだそうだ。
そこでzuiko 55mm/f1.2を「あとむくん」と呼ぶようになったのだが、トリウムは旧式の50mm /f1.8や50mm/f1.4でも使われていたこともあるようで、アトムレンズはこのレンズだけではなかったようだ。アトムレンズはたいてい古くなると黄変するので、黄色いレンズはアトムレンズの可能性があると考えてもいいだろう。
基本的にフイルター枠が銀縁のタイプはこれで、後期の黒縁のタイプはアトムレンズではないはずだ。
◆良いところ
正直言って、この初期の 55~58mm級のF1.2レンズは、ただ明るいだけであって描写力は不満が残るものが多い。特にF1.2開放の描写性能はかなり落ちる傾向がある。
一般的にはシャープで固めな描写なOMズイコーにしては、このzuiko 55mm/f1.2は(珍しく)柔らかく綺麗なボケが魅力的な描写だ。
開放は「とろん」としたとても優しい描写だ。ピントが合えばとても線の細い描写となる。F2.8まで絞ればシャープとなり普通にも使える。開放では(よく言えば)ソフトフォーカスみたいになるので、ポートレートとして使うのが最適だ。風景はしっかり絞って使いたい。
40年以上も前のレンズで、オールドレンズというよりはクラシックの域にあるレンズといってもいいかもしれない。街をレトロな描写で撮影したいときにもいいと思う。
たとえるなら角のあるとんがってた人が、年をとって親父になると、まあるく柔らかくなったようなイメージ。でも頑固でこだわりを持ち続けている、そんな描写だ。
◆悪いところ
zuiko 55mm/f1.2は太くずっしり重く、クラシカルな要素たっぷりのOMズイコーだ。一時期、意外にも高値になっていたようだが、いまの基準では評価の低いレンズかもしれない。ただクラシックレンズの描写に近いので、それが情緒的でいいね。という人もいるので、評価は二分されるだろうな。特に開放ではもやもやした感じが賛美別れるところ。やわらいのが好きな人にはいいが、OMズイコーらしいキリッとしてコントラストもしっかりしているのが好きなひとには物足りなくなるだろう。
初期型のフィルター銀枠はフレアやにじみがすごい。またレンズはアトムの影響か、黄変(黄土色に変色)してる(焼けてる)ことが多いが、後期型の黒枠になるとにじみは少く、黄変もしていないことが多いようだ。ちなみにどちらもシングルコートしかない。
何年かすると絞りに油が染みて動きが鈍くなるらしい。定期的なメインテナンスが必要になるのかな。
◆エピソード
銀枠のOMズイコー のなかで一番好きだ。M-1のシルバーにつけるととてもかっこいい。大きなレンズに気持ちも踊ってしまう。できればM-SYSTEMの銘のついたzuiko 55mm/f1.2がほしいんだよな。そもそも存在するのかすらわからない。誰か教えてほしい。⇒みつけました。ありました。買えなかったです。( ノД`)シクシク…
<諸元>
ZUIKO AUTO-S 55mm F1.2
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<所有レンズのデータ>
所有No | 名称 | コード | リア記号 | 製造年月 | 状態 | 用途 |
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Z030 | M-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 55mm F1.2(銀枠) | 良好 | 保存&常用 | |||
Z031 | ZUIKO AUTO-S 55mm F1.2(黒枠) |