OM用 Metabones社 Speed Booster ULTRAをゲット!・・・が、注意!

Speed Boosterといえば、「補正レンズ付きマウントアダブター」でAPS-C機に付けると35mm判レンズでフルサイズ撮影に近い撮影ができて、さらにレンズが1段分明るくなるという素晴らしい特徴があるマウントアダプターだ。今回OM用のものを手に入れたので今回はそのレポートをしよう。

スピードブースターとは

通常、フルサイズセンサー用レンズをAPS-Cセンサーのような小センサーのカメラにマウントすると画角が変わちゃう。例えば50mmの標準レンズが換算75mmと中望遠だ。(ソニーのAPS-Cセンサーで1.5倍になる)ところがSpeed Boosterを使えば、あ~ら不思議、50mmレンズをほぼ50mmで使えちゃう。(結果1.07倍のクロップ)

この原理はSpeed Booster内の補正レンズが焦点距離を0.71倍に広げる特性を持っているのだ。50mmレンズを例にとると、Speed Boosterに装着した状態で50mm×0.71倍=35.5mmとなる。さらにNEXなどのAPS-Cに付けると35.5mm×1.5倍=53.25mmとなり、50mmレンズをAPS-Cのセンサーでほぼフルサイズでの画角として使えるわけだ。

さらにレンズが1段分明るくなる。本来フルサイズのイメージサークルをカバーする光を、より狭いAPS-Cサイズのイメージサークルに集約する。光量は変化しないため、ひとまわり小さいエリアによりたくさんの光が集まり、結果として1段分明るくなる。50mm F1.4のレンズをNEXに付けると53.25mm F1.0だ。(ボケ量は変化しない)

まさに魔法のようなマウントアダブターだ!

幾つかのメーカーから出ているが、結構な値段するのが欠点ではあるがメタボーン社のものが比較的評判がいいらしい。

Speed Booster ULTRA

2014年9月、メタボーン社からそのバージョンアップされたものが発売された。「MetabonesSpeed Booster ULTRA」だ。”ULTRA”が付いてるのが後継機、付いてないのは従来機なので注意しておきたい。

初代Speed Boosterは上記の通り魔法のアダプターとして注目を集めていた。だが中央は非常にシャープにもかかわらず周辺部は若干画質が低下するようで、こうした補助レンズ付きのマウントアタブターの欠点といわれていた。今回の新型のULTRAでは、4群5枚の光学系を採用し、しっかりしたマルチコートが施され、従来型のSpeed Boosterと比べ周辺部の描写がよりシャープになり、コントラストも改善されている。光学系を改善した正常進化モデルといえるだろう。

そして、、、
なんとオリジナルよりシャープネスがアップするらしい。

スピードブースターの補正レンズは当然ながら現行レンズであり、しっかりとコーティングも施されている。こうしたレンズを光が通過することで、画像がより引き締まるようになるのだとか。

これについては今後検証していきたいところだが、ともかく、Speed Boosterはじめるなら「Metabones Speed Booster ULTRA」でということだな。

 

小さく使うなら有利

ASP-Cユーザがオールドレンズを楽しみたいならとても魅力的なアイテムであるはずなのだが、ネットでの記述はとても少ない。

ASP-Cカメラにこだわって新たに7万~8万もする高級マウントアタプターへの投資をするより、Sony α7シリーズのようなフルサイズミラーレズに買い直したほうが画質もキレイだしもっと面白いことできるしという市場判断だろうか。

だが、考えてみてほしい。α7シリーズもコンパクトなボディではあるがNEX5やNEX7シリーズはもっと小さくコンパクトだぞ。しかも、Speed Boosterを使うとフレンジバック(レンズのマウント面からセンサー面までの距離)が短くなるのだ!

従って、小さくかわいいOLD ZUIKOたちをよりかわいらしく使える!まさにOLD ZUIKOのためにあるようなマウントアダブターではないか~!!

これまで私はSony α7 IIにマウントをつけてOLD ZUIKOを楽しんできたが、せっかくコンパクトなZUIKOがマウントアタプターと本体と奥行きが長めで大げさな容姿になるのがとても気になっていた。銀塩OMカメラ本体に着ける感覚とはちと違うのだ。だが、NEX5n + Speed Booster ULTRA + OLD ZUIKOの組み合わせはとてもいい。かつての銀塩OMカメラの利用感覚に似た無駄のないコンパクトスタイルだ!

キャノンEFレンズ用のSpeed Boosterを使う人はある程度いるようだ。(ネットでの記事の量でそのように判断した)だが、デッカイレンズを小さいASP-Cボディで使うのってどうだろう?コンパクトで描画性能のイイOM ZUIKOをよりコンパクトに使えるからこそSpeed Boosterの価値があるのではないか!

OMマウント用ゲット

ところでこのSpeed Booster「OMマウント⇒ソニーEマウント」のマウント種は非常に生産量が少ない。

それだけOMマウントのニーズは少なかったか。なかなか国内のお店でもネットでも見かけなかった。気づいた時にはもう生産を中止したのだとか。。でもまあそうなると希少価値が高いということで欲しくなる。そして探しまわって、やっとebayで手に入れた。

希少価格だからだろうか 円高にもかかわららず77,015円もした。その金額から「Buy It Now」ボタンを押すのはとても躊躇したのだが、自前のNEX-5nでOLD ZUIKOの活用をフルサイズでどうしても使ってみたかったので、やっとその夢が叶った感じだ。

さあ、コンパクトなOMZUIKOをよりコンパクトなNEX-5nでフルサイズで楽しもうではないか~と、レンズをつけてみようとした・・ところが、、、あれれ??

誤算

なんと!使えない・・・。レンズがマウントにくっつかない。途中で浮いた感じでロックにたどり着かない。なぜだ!?どうなってるんだ??

いわゆる内部干渉だ。

 

なんとレンズの後玉周辺についているレンズガードという突起物がSpeed Booster内の補正レンズにあたってしまい、くつけることができないのだ。

補正レンズの組み込み位置が浅いため、レンズガードが干渉してしまう。後玉近辺に突起物がある場合は慎重に作業しよう。なにしろ干渉時はスピードブースターのレンズにダイレクトに接触してしまうので、傷をつけてしまう。無理やりはめようとしては絶対にだめだ。

非常にリスキーだ。

調べてみたらOLD ZUIKO 55mm標準レンズ以下の単焦点レンズはほぼすべてレンズガードがある。このレンズガードはレンズキャップをなしにレンズを下にして置いた場合にレンズを浮かせ傷がつくのを防ぐためにあるのだが、メーカ純正のZUIKOレンズがこの形状をしていることは既知の事実であるにも関わらず、干渉が起こるとはどういうことだ!?完全な設計ミスではないか!

一応このレンズガードがない85mm以上の望遠やズームレンズはつけられるようだ。(他の突起物には十分に注意してほしい)ZUIKO以外のサードパーティOMマウントレンズも付けられるものが多かった。ただし、ズームやフォーカシングをしっかり回して確認した方がいい。ヘリコイドを回すと後玉レンズが飛び出たりする場合もあるのだ!

このことはネットやメーカのページでもあまり情報がないので本当に注意してもらいたい。ZUIKOは55mm以下の単焦点はほぼ付けられないと考えた方がいい。脱着時は慎重にチェックした方がいい。

望遠ならより遠くに。広角ならより広く使いたい。ASP-Cセンサーでフルサイズとして使えるというのは、広角レンズを使うからこそ意味がある。なのに純正の広角レンズ~標準レンズは全て使えないなんて。。。私はほーんとにがっかりした。

加工処理

そこで私は奇策に出た。もうニッパをつかってこのレンズガードをとっちゃえ!ってことだ。で、何とか取り付けることができたのだ。

大切なレンズなのでこういうことはしたくないのだが、50mmF1.8は沢山持っているので一個ぐらいはいいだろう。と思って大胆に加工してみた。ニッパでザクザクっと削ったので切り口はとても汚い。金属のテカリが邪魔にならないようペンキで黒く塗ったらさらに汚くなった・・・。

なんとかこれで撮影できそうだ。これからこの犠牲になった50mmF1.8に見合うだけのいい撮影をしていかなければ!

ASP-Cの小さなボディにZUIKOのコンパクトなレンズは最高に相性がいい!

ところで私と同じことをしている人の動画を見つけたのでご紹介しよう。参考にどうぞ。

まとめ

ということでSpeed Boosterを使うメリットとデメリットを整理してみたので参考にしていただきたい。

<長所>

  • APS-C機でフルサイズ撮影と近い画角の撮影ができる
  • 明るさが1段階明るくなる。
  • フルサイズでのボケ具合とほぼ同程度(通常センサーが小さいAPS-C機はボケが少なくなる)
  • なんとシャープネスがアップする(らしい)⇒確かにそんな気がする。
  • 通常のマウントアダプターより全長が短くコンパクトになる(フレンジバックが短い)
  • 上記のこともあり、コンパクトなAPS-C機利用により、ZUIKOがよりコンパクトに使える!

 

<短所>

  • 高価なマウントアダブタ―だ。生産されておらず希少なうえに10万円近くするので慎重に購入しよう。
  • 後玉に突起物があるレンズや後玉が飛び出たレンズは、Speed Booster内の補正レンズと干渉して取り付けできない。そればかりか補正レンズを傷つけてしまう。取り付け時には細心の注意が必要だ!
    ZUIKO 55mm標準レンズ以下の単焦点レンズはほぼすべてレンズガードが干渉して着けられない!加工が必要!
  • レンズが多くなる分、ごみ混入・クモリには一層の注意が必要
  • 理論的にはレンズが多くなるため描写性能は落ちる(かも)。今後の検証で確かめたいところ。だが「描写は悪くならない」という書き込みがとても多い。⇒実際につかってみて、性能が落ちているとは感じられない。所詮オールドレンズ+最先端の補正レンズだもの。目に最新のコンタクトレンズをつけて、裸眼でみるより見えにくくなったってことはないのと同じようなものか?
  • レンズによっては開放でわずかに無限遠に達していない場合がある。フランジバックはほぼジャスト調整になっているようだ。事前に山でも向けて確認しておいた方がよさそうだ。

 

とても気に入っているのでもっともっと活用しよう~!

 

OM-D E-M1 Mark II モニター当選!試用レポートその2


前回の記事に引き続き、OM-D E-M1 Mark II 試用レポートを今回も行うことにした。

いやー、カッコイイ~

一ヶ月も共にしてくると、やはり情がでてくるものだ。
お借りしたはずの「OM-D E-M1 Mark II 」がいまでは「おれのマークツー」になっちゃった。
こうして買わされることになるんだろうな。まあいいカメラなのでほしくはなるよね。

さて、今回は、これまで撮影してきた作例を通じてレビューをどうぞ。

まずはこの作品。

最高18コマ/秒のAF/AE追従連写を試してみた。
鳥が羽ばたく瞬間。。。OM-D E-M1 Mark II のプロモーションビデオで見た鷹やフクロウの飛翔シーンを撮りたかったのだが、AF追従連写はそもそも練習が必要のようだ。どうも結果はカメラのせいではなさそうだ。

家族で大阪のUSJに行ってきた。真夏のイベントで、ミニオンのハチャメチャパーティとかで、水鉄砲をつかって撃ち合いになった。そこは防水の「OM-D E-M1 Mark II 」だ。水をびしゃびしゃにかぶりながらの撮影になった。普通だと躊躇してカメラをバックに収めちゃうはずだ。安心感があるからこそ積極的にとることができたのだ。

続いては家族で海に行ってきた。「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 PRO」は望遠でも広角でも、抜群の解像度とキレキレのコントラストを備えている。子ども撮影のようにとっさな動きに対応するにはもってこいだ。

水族館にも向かったが、早い動きがあり薄暗い水族館は昔から写真撮影は難題だ。こういう場所でのファインダーはEVFが便利。光学ファインダーの一眼レフだと何を移そうとしているのかわからないこともあるが、EVFではそんなことがないのがいい。

そういえばフラシュは使うことがなくなった。なにせ6.5段の手ぶれ補正効果だ、フラッシュなしが動物にも他のお客様にも安心だ。

8月6日は広島では原爆慰霊祭のある日だ。その日の夕方には平和を願っての灯篭流しが行われる。こうした夜間撮影を試してみた。思いのほか、とっさな対応が求められたが、期待以上に動作してくれた。ミラーレスなのに。。3枚目の少女の後ろ姿は、とっさの瞬間を撮ったものだ。最大の特徴といっていい6.5段の手ぶれ補正効果とカメラのレスポンスの速さによって作ることのできた作品といっていい。

尾道をぶらぶら散歩しながら撮影をした。心トキメク瞬間がシャッタ―チャンスだ。お散歩カメラに使うにはもったいない気もするが、とても楽しいひと時を感じることができた。その場で作品作りが楽しめるのだ。アートフィルターは十分な量の種類があるのだが、その場の思い付きでアートフィルターを変化させながら作品ができていく。「もっと時間をかけて撮影を楽しみたい」と思わせるカメラの魅力がある。

実家で花火をして遊んだ。それぞれの感情を写しとることができた。6.5段の手ぶれ補正効果は絶大である。「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」はF4という暗さだが、そのようには感じられない。手ぶれ防止機能がなければブレまくっていただろう。

 

OM-D E-M1 Mark II モニター当選!試用レポートその1

このたび、OM-D E-M1 Mark II にモニター当選!いえーい。
(2017年7月15日~8月14日までの1か月限定)

このサイトはOMはOMでもかつてのオールドカメラであるOMシリーズのカメラとオールドZUIKOを紹介するサイトなので、最新のデジタル機である「OM-D E-M1 Mark II」をレビューするとは想定してなかったのだが、せっかくのモニター当選なのでレポートすることにした。

モニターとはいえ、タダでもらえるわけではない。本キャンペーンの場合は丁重にご返却しなければならないルールだ。しかも「作品提出」と「レポートの作成」、そして「SNSかブログで紹介」しなければならないという宿題付きだ。

そのためここで紹介することにしたわけなのだが、宿題が多すぎて、モニターに当選したのは良かったのか悪かったのか微妙なところだ。ただ、せっかくの今上OLYMPUS様からのありがたい機会を頂いたわけなのでいろいろ試してみることにした。

やはりこのフォルムはカッコイイ。

あのOM-3Tiそっくりだ。
1994年11月、OM3Tiと同時に発売されたのがZUIKO 35-80mmF2.8というオールドZUIKO最後のプレミアム高級ズームだったが、その組み合わせにそっくりだ。

ちなみにこの写真は私の自宅スタジオで簡易撮影したものだ。せっかくなのでお返しする前に記念に撮らせていただいたわけ。
ところが、後で気づいたのだが、フードが同封されていた。今上オリンパスではフードは別売りと聞いていたので、箱の中身をを見落としていたようだ。
みなさーん。M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 PROにはフードが付属されてますよー。気を付けましょう。
フードを付けて撮影したらOM3Tiにもっとそっくりだっただろうかなと思う。

さて、肝心の操作について、オールドOMマニア的に感じたことから書いていく。

①軍幹部の操作

まずは軍艦部(上部操作部のこと)だが、メインスイッチは古くからの伝統的な位置にある。1972年7月発売のOMシリーズ元祖であるOM-1の改名前のM-1からこの位置にメインスイッチがある。伝統を重んじるオリンパスらしい意気な計らいだ。私のようなオールド時代からのファンに対する配慮だろうか。

またそのメインスイッチあるスイッチ群の形状。これはまさに「フィルム巻き戻しレバー」そのものじゃないか!といっても若い人にはわからんだろうなぁ。

この「フィルム巻き戻しレバー」チックなデザインのボタンを使ってAFモード /測光モード/連写モード/セルフタイマー/HDRモードが切り替えられるようになっている。これは便利だ。というか操作性は非常にいい。ささと切り替えられられる。メニューからもごもご切り替えに迷うなどストレスなく対応できた。

ところで右手の人差し指で操作するフロントダイヤルと親指で操作するリアダイヤルという二つのダイヤルについて。これには意見がある。

フロントダイヤルで露出補正。リアダイヤルは絞り優先オートでは絞り調整、シャッタースピード優先オートではシャッター速度を調整するわけである。

最近のほとんどのデジタルカメラはこれの操作であたりまえのことであろう。でも私にはこの親指でクリクリするのはすきじゃない。まどろこしいのだ。F32からF2までさっと移動させたいのに、親指でクリクリクリクリやり続けなければならない。そのうちシャッターチャンスを逃すかもしれない。

オリンパスはかつてカメラの大きさを小さくするため、常識では軍艦部に置かれたシャッターダイヤルを、レンズマウントに並べたリング方式にした。操作性としてもコンパクトさを実現したことも、当時としては画期的な発想だ。

レンズのピントと絞りとならんでシャッタ速度を左手で調整するのだ。オールドOMで親しんだ世代はみな左手で絞り・シャ速のリングを回す。これは体に染みついている。これこそオリンパスの伝統でありOM文化なのだ。

OMの伝統に従っているようで電源レバーなど見た目のデザインだけではうなづけない。どうして操作性としてのOM文化を継承しようとしなかったか。伝統とは形だけでなく心の問題なのだ。
右手の親指クリクリよりもマウント周りににリングをつけてササーとレンズを支える左手で操作したほうがレスポンスは絶対にいいはずだ。

こうしたオリンパスが持つ操作性におけるオリジナリティを大切にした商品をこれからも出してほしいものだ。次回作に期待しよう。

②グリップ

さて本体ははやり小さい。この大きさでこの性能でフラッグシップ機だ。オリンパスらしい。

その昔、カメラは見た目大きくてズッシリしてガジャガジャうるさいほうが良いとされた。昔はカメラはとても高級だった。高いお金をはらったからにはそれらしい見た目とその大きな所有感を味わえれうほうが良かったのだ。

しかし現実はそれとはちがう。小さく軽くて静かな方がいい。まちがった世の常識を現実的で利便性につながる常識にかえた。それがオリンパスだ。OM-1開発者の米谷美久氏はこれを「重い・大きい・うるさい=カメラ三大悪」と呼んで解決するための結論がOM誕生となった。

しかし米谷氏は、なにからなにまで小さくしようとしたわけではない。ダイヤルやレバー、マウント径や暗室部の大きさなど、操作性能に必要な部分は逆に大きくした。形状は小さく、操作は大きくがOM設計のコンセプトだ。OMの後発で単に小さくしたPENTAX MX とはわけが違う(OM-1と比較し形状は1mmづつ小さくできている。だが故障がおおくメンテナンスもしにくいという話だった)

「小さく大きく」。OM-D E-M1 MarkIIのグリップを握った瞬間、まさにそのオールドOMの基本思想を思い出した。本体は小さいがグリップホールド感はむしろ大きくゆったり感じる。
小さく大きな所有感を味わえるカメラなのだ。

③メニュー操作

実は今回の試用でOM-Dを初めて触った。

私は基本オールドOMマニアで旧ZUIKOが大好きなので、基本フルサイズでなければ古いレンズの神髄は得られないと考えている。
35mmを捨て、4/3やmicro4/3というセンサーサイズで新しい市場を開拓した今上オリンパスのそのチャレンジ精神には敬意を払いたいと思う。だが私の大好きな旧ZUIKOを35mm換算で倍の焦点距離として使うことになるのにはどうしても抵抗があったのだ。(オールドZUIKOは捨てて今のM.ZUIKOに買い替えればいいんだけどね。捨てれんのよ)

と、言い訳が長くなったがそんなわけで本体はSonyのα7IIを使ってる。デジタルメニューの操作性はα7に慣れていて、OM-Dのメニューは初めて触る。なので心配だったのだ。 が、、

全く心配なかった。。。すっごくわかりやすい。ソニーよりいいぞ!メニューは。

④EVFファインダー

ファインダーについては「光学ファインダーを超える電子ビューファインダー(EVF)を実現」という触れ込みもあり、かなり期待していた。
これまでのEVFと比較すればかなりよくなっているらしい。

だが、α7IIを使っている自分としては色の再現性が少々がっかりだった。風景の見たまんまの色ではない。若干の色の違いが気になるのだ。わずか緑かかったくすみかかった感じだ。慣れれば問題はなくなりそうだが、感じた唯一の欠点だ。他はパーフェクトといっていい。

 

最後に、渋谷界隈を散歩して撮影したので、作例として紹介しよう。

ZUIKOの名称の由来

オリンパスのレンズ名のZUIKOは、漢字では「瑞光」と書く。瑞光とは、吉兆を知らせるおめでたい光のことなのだそうだ。

ZUIKOの名称の由来はもうひとつある。

1936年に発表したオリンパス第一号カメラの「セミオリンパス I」で使用したレンズが、「瑞穂光学研究所」で開発された。この瑞穂光学研究所の瑞と光の文字をとって「瑞光」=ZUIKOとなったのだ。

よく「オリンパスの前身の瑞穂光学研究所の文字をとった」というネットの記事を見かけるがこれは誤りだ。

もともとオリンパスは「株式会社 高千穂製作所」といった。レンズ開発の子会社に「八洲光学工業」というのがあった。1935年の創業だ。秋から 写真レンズの試作している。

ここからは想像だが、自力でレンズ開発をめざすもうまくできなかったのだろう。なので外部企業である「瑞穂光学研究所」の力を借り、翌年1936年になんとか念願の第1号カメラが誕生したのだ。当時のオリンパスでは自力でカメラレンズは開発できなかったんだ。

その証拠にネットでオリンパスの歴史のどこをみても「瑞穂光学研究所」がでてこない。

もし子会社「八洲光学工業」が開発したなら、「八光」HAKKOブランドになってただろうよ。(笑)

「瑞穂光学研究所」という会社の協力があったおかげでZUIKOのブランド名が生まれたんだ。

その後の「瑞穂光学研究所」の歴史はわからない。もしかしたらオリンパスに吸収合併されたんじゃないかな。想像だけど。

 

さて、「瑞光」というと非常に日本的な名称だが、そもそもオリンパスの社名の由来も、日本神話に由来するものだ。

オリンパスはもともと「高千穂光学」という社名だと述べた。

日本神話の神々が集う場所である高千穂を、ギリシャ神話の神々が集う場所であるオリンポス山になぞらえて、OLYMPUSというブランド名を名乗ったのだ。神話繋がりなのだ。なかなかカッコイイ。

自然を切り取る性能にすぐれたOM ZUIKOレンズと、日本神話に由来するオリンパスという社名。日本神話が日本の自然と一体となったものであることを考えると、OM ZUIKOレンズがみずみずしい描写を持つのはけっして偶然ではなかったと思えるのだ。

今あらためてOMカメラの魅力

今回はあらためてOMカメラの話だ。

オリンパスのOMシリ-ズ一眼レフは1972年7月に発売された。ハーフカメラのペンシリーズ・ペンFTのヒットで勢いづき、本格的な一眼レフへの参入を切り開いたのだ。

そしてこのOMシリーズのベースになったのがOM-1だ。

当初、発売開始時の名称はM-1だった。が、エルンスト・ライツ(現ライカ)からのクレームに対応して翌1973年にOM-1に改称されたといのは有名な話だ。詳しくはこちらを参照してほしい。

OLYMPUS M-1

オリンパスM-1/OM-1は、一眼レフ市場に後発での参入となった。だが後発としての正しい戦略を見事に打って出たのだと思う。

後発としての正しい戦略とは何だろう。

それは先発のモノマネをするのではなく、むしろ先発の商品の弱点を突き、かつ、より特徴ある商品づくりをしていくことだ。

似たり寄ったりの商品で勝負すると、既存の市場参入で単に食い荒らそうだけの戦いになる。それでは先発には勝つことは決してできやしない。

後発が勝つためには、己の商品で己の新たな市場を作りあげることにある。まさしくオンリーワン戦略をとることだ。オリンパスのその戦略は見事に成功したのだと思う。

根強いOMフアンが生まれたのもそのオンリーワン戦略に誤りがなかったためだ。

今回、あらためてそのOMカメラの特徴ある作りを整理して紹介したい。

小型軽量~OMショックの登場~

小型・軽量であることは大きな特長のひとつとなっている。

F1.4の大口径レンズ付きでも720グラムと軽く、これは当時の一般的な一眼レフ機が1キログラムを普通にオーバーしていた時代、驚きのカメラだったといっていい。

同時に開発されたZUIKOレンズ群もボディに合わせて小型軽量に設計されている。

当時手持ち撮影は不可能とされていた300ミリの望遠レンズも、その軽さから三脚なしで撮影できるといわれた。

このOMショックはその後の小型軽量化競争のきっかけを作ることにもなったのだ。

後のNikon FM、PENTAX MXなどもOMカメラに触発され登場したものだろう。

特筆するのは、一眼レフでは避けられないペンタプリズムの大きさが極めて小さかったことだ。実にシンプルなデザインだ。

この小ささを実現するために、通常はプリズムの下に配置されていたコンデンサレンズを、プリズムの下面に大きなRを持たせることによって不要として、プリズム全体の高さを低くするという、既存の発想にとらわれない設計がなされていた。

こうした創意工夫はこれだけにとどまらず、このカメラはすべてを小さくコンパクトに収めるための様々な創意工夫がちりばめられていたのだ。

音が静か~エアバンパーの導入~

一度使って見ないと絶対にわからないのがシャッター音だ。一度シャッターを押したら最後、このシャッター音に魅了されて虜(とりこ)になってしまうとまで言われていた。

それがこの静かで優しいトローンとしたシャッター音だ。

一眼レフは構造上ミラーのアップダウン(クイックリターンミラー)のショックがつきもの。

だが、OMカメラではエアダンパーが取りつけられミラーショックを少なく軽快にする工夫を施しているのだ。

ミラーボックス横に立っている円筒形の部品がダンパーで、これが一眼レフに不可欠なミラーが作動するときに働いて、音とショックを吸収する役割を果たしていた。

小型軽量に設計されたOM-1だけに、クイックリターンミラーの音はともかく、このダンパーのおかげでで音とショックが軽減され、ぶれも軽減される一石二鳥の効果もあったのだ。

ただでさえ小さくスペースがないカメラの中に、このような機能部品を導入したという、オリンパスの当時の技術陣は、本当に素晴らしい仕事をしたと思う。

OMシリーズは、「小型軽量」をモットーにして開発されたことが最大の特徴だ。

OMシリーズの開発者、米谷美久(まいたに よしひさ)氏は、「大きく」「重く」「動作時の衝撃が大きい」という、「一眼レフの三悪」のないカメラの開発を目指してOMカメラを開発したという。

それが、小型軽量かつ、シャッターのショックが少ない名機となって生み出されたのだ。

宇宙からバクテリアまで~システム化の成功~

オリンパスはもともと内視鏡や顕微鏡を手掛ける光学メーカーだ。それを利してアダプタをはさむことでそれら内視鏡や、他社の望遠鏡と接続させて撮影することを可能にさせた。

後発でありながらうまく既存製品との連携を図り、商品を素早くトータルなシステム製品とすることに成功したのだ。現在においての商品マーケティングを考える上でもとても参考になる戦略だろう。やっぱ商売上手だなぁ。

シャッタースピードダイヤルの位置

シャッターダイアルはレンズマウントの基部にレンズシャッターのような形でリング状に配置されている。

設計した米谷美久氏は、小型化するためにシャッター機構を本体下部に役を得ず設置したためこうなったと述べているが、これの配置は実によくできた設計だったとおもう。

OMカメラの多くは露出調整はファインダー内の露出計の針をある一点に合わせることで適正露出が得られる作りになっている。

一般的に撮影とはは右手でカメラをホールドし、左手でレンズ鏡筒にある絞りを操作して露出を調整するものだ。

時に、ファインダを覗き込んだまま露出調整しながらにシャッタースピードを自由に変えたくなる。そんな場合、従来のカメラではダイヤルがシャッターボタン横にあるために右手を使う必要があり、カメラを持ちかえなければ(右手のホールドを解かなければ)ならないのだが、OMカメラではそのまま左手で絞りリングと同じ感覚でシャッタースピードを変更することができる。

つまりファインダーから目を離さず露出の指針を追いながらシャ速調整をするという、極めて自然な撮影スタイルが可能になるのだ。

ファインダーから目を離す必要なくタイムリーな調整ができるのはうれしい。

私はいまだに他のメーカがこの方式を採用しなかったか不思議でならない。(特許の関係でもあったのだろうか?)

このことはこちらにも詳しく紹介しているのでぜひ参考にしてもらいたい。

OMのシャッター速度調整リングの謎

露出補正の位置

ボディの上部、シャッター脇にある、一見シャッターと見間違う大きなダイアルはフィルムのISO感度設定用のもので、ISO25-1600を19段階に細かくわけてセットできる大変精巧な作りになっている。

現在では露出補正はボディ上部に配置され、スピーディに調整できるようにしてあるのが当たりまえだ。

ところがOM発売の当時のたのほとんどのカメラには「露出補正」がないか、ISO感度設定ダイヤルでそれを代用していた。つまり感度100のフィルムで感度を200にすれば+1の調整と同様になる。そういうやり方が一般的だったのだ。

OMが、ボディ上部のシャッター脇にISO感度設定を配置したのは先見性があったとおもう。オートの時代で一番よく使うのが「露出補正ダイヤル」だからだ。これが使いやすい位置にくるのは当たり前ではないか。

ところが当時としてはこれもOMカメラしかみられない場所だったのだ。

シャッターボタンの外周リング

シャッターボタンのまわりに外輪山のようなリング状のカラーが見えると思う。

この何でもないようなリングが、撮影がテンポよくできるための有効な工夫だった。

シャッターボタンは、押し初めから実際にシャッターが切れるまでにある程度のストロークがあるが、撮影スタンバイ時にシャッターボタンをストロークさせていくと、指の腹がこのカラーにあたったあたりでちょうどいいあんばいにバランスしてとめられる位置がある。

この状態からシャッターを押したいと思った時にほんのわずか、指に入力をするだけで、最後の0点何ミリかがストロークしてすとんとシャッターが切れるのだ。この絶妙な操作感がたまらなくよかった。

巻戻しクラッチの設置場所

従来のカメラは、フィルムを使いきったあとに巻き戻しする際、カメラの底についている巻き戻しクラッチボタンを押して巻き上げ機構をフリーにしたのち、巻き戻しクランクを回して巻き戻していた。

OMカメラではクラッチがシャッターボタン下のカメラ前面にある。

OMカメラのウリの一つに超高級機しか実現していなかった毎秒5コマのモータードライブ撮影が可能だった点があげられる。一般的なカメラでは、モータードライブを装着した状態だと巻き戻しをするたびにカメラ下に装着したモータドライブドライブユニットを外さないといけなくなるはずだ。

OMカメラではモータードライブユニットを装着したままで巻き戻しができるようにしていたのだ。

実に当たり前のようなことだか、これも他のメーカーが情けなく思えてくる。どうしてあんな場所に巻戻しボタン置いたのだ??

その他

ほかにも、被写界深度を確認するための絞込みボタンがレンズ正面から見て左下についていて、絞りを調整しているそのままのホールド状態で、中指もしくは薬指で操作できるとか、使いやすさとかシャッターチャンスを逃さないための工夫など、本当に行き届いた設計だ。

また露出用電源スイッチも、他の一眼レフのように本体下部の底に申し訳けない程度についているのではなく、堂々とカメラ上部の目立つ位置に配置された(現在では当たり前だが)。しかもこれが大きなレバーで、オンオフするとカチッカチッと小気味よく動いて気持ちがいい。こんな細かい点に対する配慮がファン層を広げたところだろう。

40年以上ものの前、いまデジタル時代とは全く違う次元で、かくも体の一部のように扱える撮影機械を生み出したオリンパス技術陣・開発陣の技術者魂には本当に頭が下がる思いだ。